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Barrett & Mackay Photography
The New York Times オンライン版より引用

ついに昨日、11月19日、アメリカで遺伝子組換の鮭が米食品医薬品局(FDA)
に承認され、市場解禁
となった。

この鮭は、キングサーモンが持つ成長ホルモン遺伝子が組み込まれており、
市場に出回るまでの時間が従来の鮭の半分で済む、成長が早い鮭。
その安全性については1990年代よりFDAと開発会社のアクアバウンティ・
テクノロジーズ(AquaBounty Technologies)の間でずっと戦われていたが、
ついに「みんなが食べても大丈夫」とのお墨付きがでたというわけだ。

ただ、一部の消費者や環境保護団体などは、「遺伝子組換の大型の鮭が海や川に
逃げ出したら、従来型の鮭や生態系に悪影響を及ぼすのではないか」と未だに
猛烈な反対を唱えている。

この遺伝子組換の鮭、実際に店頭では「遺伝子組換の鮭です」と明記するのは、
あくまで任意であり義務としない方向で動くとのこと。
消費者は、それが遺伝子組換かどうかわからない状態で鮭を購入する可能性が
でてくる。

大豆やとうもろこしではなく、動物に承認された「遺伝子組換」、
そしてその市場解禁。
これは、その他の動物、例えば豚や鶏などの遺伝子組換と市場解禁を後押しするもの
となり、そうなると今後また消費者と開発企業、政府の間で議論が起こりそうだ。

人間(霊長類)及び、雑食動物が「食べ物」を選ぶとき、
その食べ物の価値と安全性を選ぶ基本的作業は「味覚」を使ったもので、
ブリア=サラヴァンが「美味礼讃」に書いているように、
「味覚は自然が提供する様々な物質のうち、口に入れるのに適切なものは何か選択を助ける」のだ。
そして、人間は二つの強い本能的な偏向がある。
一つは「甘さ」。甘さはエネルギーの源で、脳が働くときは膨大な量のグルコースを
必要とし、グルコースの源となるのは炭水化物由来の糖質である。
味覚の第二の偏向は「苦み」を嫌う傾向。
苦みは主に、植物が自己防衛のために生産する毒であり、苦みを感じるというのは、
毒が体に入らないように注意せよ、というセンサーなのだ。

ううむ、遺伝子組換ラベルがない切り身の鮭が店頭に並んで、
それを調理して食べるとなると、きっと我々の「味覚」は遺伝子組換か
どうかを見分ける役には立たないだろう。
それ以前に、その遺伝子組換鮭が安全かどうかは、
政府や企業の研究機関が決めることであって、
我々が自分の舌を使って決めることではない時代になってしまったのか。

人への安全性だけでなく環境への影響面から、
これまでの我々人類の自然との共生の在り方も考えてみる。
例えば、農業とはある意味自然を破壊する行為であり、
田畑を作ることによってその地域の生態系を変える場合がある。
小規模であれば自然には大きな影響を及ぼさないが、
例えば大規模農業で単一作物ばかりがずらっと並べば、
明らかに地域の生態系は変わる。
今や自然を作り変えなければ胃袋を満たしていけないほど人口は増加し、
太古の昔のような粗食には戻れないほど人の食欲も増加しているのは事実だ。
だからこそ、その延長線上に早く簡単に大きく育つ鮭、
のような「遺伝子組換」動物の承認があるのか。

社会人類学者、クロード・レヴィ・ストロースは
「人類にとって食べ物とは、口や身体だけでなく、意見に合うもの」
と名言を残している。

「遺伝子組換の動物を食べる」という行為、あなたの意見は?