No.002 野菜が育つお手伝い、というスタンス~三田村さんご夫妻
No.002 MITAMURA HIROSHI・EMI
三田村さんご夫妻
農業 経営
2010年から熊本県・天草市へ移住し、農家としてスタート。慣行栽培・有機栽培、2013年より自然栽培を開始。
二人のかわいいお子さんを愛する仲良し夫婦。https://marumi831.thebase.in/
収穫の合間を縫ってお話しいただきました。
日差しが強くなってきた6月、出荷はピークを迎えている。
「野菜がせっつく。オクラとレタスが早よう出してくれ!と言う。」と、博さん。
出荷は今からが一番忙しい。野菜はどんどん大きくなり、収穫時期が一気に重なる。
収穫のタイミングをのばせば、かたくなったり味が落ちたりして売り物にならない。
「休みは野菜に合わせないといけない。野菜に挨拶しに行かなきゃいけない、という感じ。」
のどかな風景が広がる畑の周り。鳥の声、風の音、おいしい空気、そして緑が最高。
私たちが選んだ田舎暮らし
天草に移住して田舎暮らしを始めたころは居心地がよく、人生の楽園だと大満足!と思いきや、この満足感はわずか一か月で終わり。旅行気分が抜け、この地で生計を立てなければ、という現実と向き合うことに。
農業を初めて約5年経つが、計画通りにいかないことも多い。費用・利益・栽培する品種や規模を見定めるのも難しい。
そんな中、お客さんから「おいしい」と言ってもらえることが何よりの励みだ、と三田村さんご夫妻。
野菜を食べてくれた方が「おいしかったから」と、わざわざ畑まで買いに来てくれたことも。
とてもうれしかったのでその時は結局野菜をあげてしまったのだとか。
「田舎生活の面白いところは物々交換ができること。野菜をあげて、肉や魚をもらったり。お金の呪縛から離れるほどの
物々交換ではないけれど、何とも言えない喜びを感じます。」と恵美さん。
「子育てもしやすいです。ほったらかしで勝手に兄弟で遊んでくれる。自然いっぱいの場所で土や水に触れ、良い体験ができていると感じます。」
できるたけ、ありのままに育てる自然栽培に惹かれました
自然栽培の畑。
移住して一年目、第一子が誕生。そして、東日本大震災をきっかけに安全なものを子供に食べさせたいという気持ちが生まれる。
そんなタイミングで自然栽培をされている方と出会い、話を聞いていくうち自然を大切にする栽培方法に惹かれた、と振り返る。
自然栽培とは、基本は無投入。肥料を与えない、農薬を使用しない栽培方法のこと。
「例えば、肥料として鶏糞を入れるにしても、その鶏の餌は添加物にまみれているかもしれない。そう考えると肥料を入れることは
化学物質を投入することと一緒。だから、たい肥も入れない自然栽培に惹かれました。」
ぐい!と引き抜いた鮮やかなオレンジ色のニンジン。甘くてニンジンの風味抜群!
野菜が育つお手伝いをする、というスタンス
「自然栽培とは、野菜がどう育つか見ること。」と教わった博さん。
自然栽培を始めたころは、そんな楽な農業はない、と楽観的に考えていたが実際は大変。
草を入れたり(植物性たい肥のみを自然的に投入)、いろいろ手入れが必要で時間がかかる作業が多い。
できるだけ自然の状態に近づくよう、目を配り、でも過保護にせず、というバランスが難しい。
それでも、自然栽培は見るだけだ、という。人がすることといえば、種をまいて収穫するだけ。
その間にいろいろ向き合うことがあるだけ。
肥料は入れないのだから、その土地に合う作物に変えること、あとは剪定や、虫がつけば捕殺するくらいしか人ができることはない。
あくまで、野菜が自らの力で自然に育つお手伝いをする、という役割に徹する。
慣行栽培、有機栽培、自然栽培の3つを行っているが、慣行栽培と有機栽培は投入する資材が異なるだけで、やはり面白く奥深いのは
自然栽培だと感じる。
「ビニールハウスを何棟も立てて事業を大きくしたいわけではない。お金を稼ぐ必要はあるけれど、今は探求心のほうが強い。」
今年は直播きを積極的にやってみたい。
こぼれ種から翌年育つ野菜は、強く育っているように見えるから。